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<北朝鮮内部>住民の特別取締り宣言した「布告文」剥がされ波紋 警察が大捜査(写真4枚) -4月10修正版

(参考写真)地下鉄駅に入る住民を選別する兵士。「身なりの悪い」人は駅構内に入れない。2011年6月に平壌市大城区域にて撮影ク・グァンホ(アジアプレス)


北朝鮮では、国民に対し特別に厳しい統制措置を講じる際、「布告」が出され公共の場に張り出される。アジアプレスでは、少なくともこの10年間で4回の「布告」が出されたことを確認している。

例えば2009年12月に出された「布告」は、「外貨を流通させた者は死刑も含め厳罰に処す」という内容だった。他に「交通秩序を乱す行為」「危険薬物使用」を厳罰に処すというものがあった。

3月19日に新たな「布告」が出されたことを、多数の取材協力者が伝えて来ている。人民保安省(警察)名の「反社会主義、非社会主義の行為をする者を厳罰に処すことについて」という題目で、尊厳ある我われ式社会主義に反する行為を強力に取り締まるという内容。住民に対しては所属する機関、組織の会議で、別途口頭で、中国への越境、密輸や麻薬販売、中国の携帯電話の不法使用、資本主義的な経済現象、資本主義的な服装や髪形などを厳重に取り締まると、説明があり住民の間で緊張が高まっているという。

ところが、3月31日に北部の恵山市で、張り出された「布告」が剥がされる事件が発生した。「恵山駅前に張られた『布告』が夜間に剥がされた。糊付けした四隅だけが残っていた。保安(警察)、保衛部(秘密警察)が動員されて大捜査が始まった」

複数の取材協力者が、このように伝えてきている。統制強化を図る当局に対する不満からか、外国に「布告」の内容を伝えようとしたのか、実行者の動機は不明だ。
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<北朝鮮内部>正恩氏夫人のリ・ソルジュ氏に反発の声 「小娘が女史だなんて」

「女史」と呼ばれ始めた李雪氏。国内では派手好きな小娘というイメージを持たれている。(労働新聞より引用)

金正恩氏が、妻の李雪主(リ・ソルジュ)氏を重要行事に同伴する事例が増えている。

去る2月8日に行われた朝鮮人民軍の創建記念日では、正恩氏に寄り添うように軍事パレード(閲兵式)の壇上に並んだ。3月5日には平壌を訪れた韓国の文在寅大統領の特使一行をもてなした晩さん会にも出席した。

重要国家行事に登場した李雪主氏を、北朝鮮国営メディアは、それまでの「同志」ではなく「女史」と呼ぶようになった。同志は仲間であるが、女史は見識や教養が豊かな女性への敬称だ。表舞台に立たせることで、内外で「ファーストレディ」としてのイメージを作ろうという意図だと思われる。

これに対して、北朝鮮内部では反発の声が上がっている。3月中旬に電話インタビューした女性は、「女史なんて呼んでいるが、あんな小娘を連れ回してみっともない」と辛辣だ。

韓国当局の情報などによると、李雪主氏は1989年5月生まれとされる。事実なら現在28歳。2005年9月に韓国の仁川(インチョン)で開催されたアジア陸上選手権に、応援団(いわゆる「美女軍団」)の一員として参加していたとされる。その後、銀河水管弦楽団で歌手をしていた。芸能人出身である。

「どっかで歌をちゃらちゃら歌っていたのが目に留って、それが『女史様』だなんて。ここでは李雪主のことをよく思っていないんです」

前出の女性はこのように言う。北部地域に住む別取材協力者の評価も厳しい。「短いスカート履いた小娘が金正恩の横を笑ってくっついて回っている」。北朝鮮の庶民の李雪主氏に対するイメージは「派手好きな小娘」というもののようだ。

金正恩氏と李雪主氏の間には子供が二人いると言われている。北朝鮮メディアが李雪主氏を女史と呼び始めたのは、彼女を将来的に国母として宣伝する、つまり4代世襲の布石だと考えられる。(カン・ジウォン)

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<北朝鮮内部>「韓国との対話は金正恩将軍の勝利」 国内で宣伝始める 隠された非核化 幹部も知らず

<北朝鮮内部>「韓国との対話は金正恩将軍の勝利」 国内で宣伝始める 隠された非核化 幹部も知らず

(参考写真)秘密裏に撮影された政治学習の現場。2013年8月に北部地域で撮影「ミンドゥルレ」(アジアプレス)


北朝鮮国内で、幹部と住民を対象に「南北対話の始まりは金正恩将軍の勝利だ」とする宣伝が公式に始まっていることが分かった。北部の咸鏡北道の複数の取材協力者が3月13日以降に伝えてきた。 (カン・ジウォン/石丸次郎)

この取材協力者によると、党などの幹部対象に講演が行われたのは3月9日で、題目は「すぐれた外交的見識を持つ偉大な将軍様」。地区の初級幹部以上を集めて40分に渡って行われたという。


内容については、講演に参加した高級幹部に聞いたとして、「(韓国政府の特使との)今回の会談は、経済封鎖によって共和国を圧殺するための敵どもの卑劣な策動を打ち破るための、金正恩将軍の偉大な業績だというものだったそうだ」と述べた。南北、および朝米の首脳会談については、まったく説明がなかった模様だという。


また、幹部とは別に住民を対象とした学習も行われた。北朝鮮では全住民が職場や地域、学校などに組織され、週一回の「生活総和」と呼ばれる自己批判集会への参加を義務付けられているが、3月10日の「生活総和」の時間に、「強大国の経済封鎖を打ち破っている我が国に全世界が注目している、という内容の学習会議が行われた」と、取材協力者は述べた。やはり韓国の特使が来たことだけに言及があったという。
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<北朝鮮内部>「我われの勝利で制裁は3月に緩む」 当局が国内で根拠なき宣伝 制裁影響深刻なせい?(写真2枚)

(参考写真)地方都市で行われた住民対象のの政治学習集会の様子。2013年夏に撮影アジアプレス

 

経済制裁の影響が出始めている北朝鮮国内で、3月から制裁は緩むという説が広がっている。経済悪化が進む中で住民に不満が出始めており、当局が現実を糊塗しようと情報を流布させているようだ。(カン・ジウォン)

2月23日に中国税関当局が発表した貿易統計によると、今年1月の北朝鮮からの輸入額は約4700万ドル(約50億円)にとどまり、前年同月比で77%も減少した。

昨年8月以降に本格化した国際社会の経済制裁。石炭や、鉄鉱石、海産物などの北朝鮮からの輸入禁止、合弁事業の制限、石油製品の輸出制限などが維持されており、北朝鮮国内では経済悪化が進んでいる。
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鉱山や水産業の中には操業中断に追い込まれた事業所も出ている。また、燃料価格の上昇によって物価が上がり、軍隊では物資輸送に牛車を使う部隊も出ている。
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<北朝鮮内部>最大祝日の粗末な贈り物に庶民そっぽ 正日氏生誕日と重なり「正月の雰囲気ない」(写真2枚)

(参考写真)2011年の金正日氏の生誕日に配られた菓子袋。「世の中に羨むものなし」と書かれている。美味しくないと不評で市場で売る人が続出した。2011年2月に撮影チェ・ギョンオク(アジアプレス)

今年の旧正月は2月16日だ。つまり、北朝鮮では故金正日氏の生誕日(光明星節)と重なった。この日は、4月15日の故金日成氏の生誕日と並ぶ「民族最大の祝日」とされている。今年の北朝鮮の正月の雰囲気はどうなのか? 北部地域の取材協力者に聞いた。(カン・ジウォン)

◆最大の祝日の粗末な贈り物

北朝鮮では毎年2月16日に、「特別供給」と呼ばれる政府からの贈り物が住民に配られる。社会パニックが広がった90年代以降、質量の低下が著しく、子供用の菓子セットや酒1~2本が配られる程度になった。今年はどうなのだろうか?

「2月に入ってから『今年の特別供給はかなりいいらしい』という話が広まっていましたが、日が近づくにつれてしぼんでしまい、結局無料で配られるのは一世帯当たり食用油一本と布製のズック靴一足だそうです。ズック靴(地下足)なんて誰も履かないのに…。あとは金を出して買えと。もし子供のお菓子でも出たらたいしたものです」
※「地下足」は軍用の簡素な布靴を民生用に色を変えたもの。

(参考写真)配給所前の大行列。珍しく特別配給があるときは生活の苦しい人が延々と並ぶ。2008年9月黄海北道にて撮影シム・ウィチョン(アジアプレス)

正月らしい雰囲気がありますか?との問いに協力者は
「金正日の生誕日が優先なので正月の雰囲気なんてありませんよ。金与正が五輪で韓国に行ってきた記念報告大会もやるというし」
と答えた。忠誠のための行事に動員されて正月も台無しだというのだ。

平昌五輪と南北対話についても質問してみた。
「応援団が南に行ったのは知っています。平壌芸術学院に行っている知り合いの娘が派遣されることになったので。でも、応援団に選抜されるなんて金持ちの家の子供だけ。一般庶民の子供が行けるはずがありません。韓国と対話するのがいいのかどうかなんて、我われ下々のものにはわかりませんね」

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<北朝鮮内部>制裁影響深刻 貿易会社休業や給料停止相次ぐ 軍も牛車使う(写真3枚)

鴨緑江で洗濯する女性。国境警備隊の許可を得ないと川辺に出られない。2017年7月中国側から撮影石丸次郎(アジアプレス)

北朝鮮国内で経済制裁の影響が広がっていることがわかった。中国貿易を担ってきた商社が不振にあえぎ、軍隊の補給にも支障が出ていると、北朝鮮国内の複数の取材協力者が調査して伝えてきた。金正恩氏が実妹の金与正(キム・ヨジョン)氏を特使として派遣した背景には、切羽詰まった国内事情があった可能性がある。(カン・ジウォン/石丸次郎)


「昨年10月の初めから営業できない貿易会社が出始め、今では開店休業状態になった会社が多い」

咸鏡北道に住む取材協力者A氏が、いくつかの地方都市を周って2月初めに伝えてきた情報だ。A氏は貿易会社の窮状を次のように説明する。

「清津(チョンジン)市にある強盛(カンソン)貿易会社は、水南(スナム)区域の市場のそばに大きな建物を持っていたが、中国への輸出が止まって営業できず、建物を市場の商人たちに倉庫や卸売りのスペースとして貸し出している。会寧(フェリョン)市でも、強盛貿易会社やトンヤン会社などの出張所が、中国への輸出が途絶えて、事務所を賃貸倉庫にしていた」

平壌に本社を置く貿易会社は、地方都市に支社や出張所を置いて、鉱物や水産物、委託加工品などを現地で調達して中国に輸出してきた。ちなみに強盛貿易会社は平壌に本社を置く人民武力省傘下の貿易会社だ。

次のページ:貿易会社の営業不振は、当然、従業員の待遇悪化となる…

<北朝鮮>金正恩氏の妹与正氏は悪筆でカクカク文字 緊張して? 几帳面? 芳名録に肉筆で一文

金与正氏(右)と金永南氏が芳名録に書いた一文(韓国大統領府発表)

2月10日に韓国大統領府(青瓦台)を訪れ、文在仁(ムン・ジェイン)大統領と会談した金与正(キム・ヨジョン)氏。高位級代表団団長の金永南(キム・ヨンナム)氏とともに、芳名録に記帳していた。


金与正氏が書いたのは写真の右側。

平壌とソウルが我が同胞の
心の中でさらに近くなり
統一繁栄の未来が早まることを
期待します。

朝鮮民主主義人民共和国
高位級代表団
金与正
2018年2月10日



一方の金永南氏が書いたのは

統一志向の談合と
確信の努力を傾けて
いくことが民族の念願だ。
金永南
2018.2.10

青瓦台を訪れた時の映像を見ると、金与正氏は緊張した固い表情であったが、芳名録にしたためた一文にも固さが窺える。
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<北朝鮮内部>正恩氏実妹・与正氏を北の庶民はどう見ているか? 電力難で見られない平昌五輪

今から5年前のヨジョン氏。平壌での芸術公演観覧を報じた労働新聞より引用。2013年3月

◆電気がなくて五輪わからない

平昌冬季五輪が開幕した。北朝鮮からは芸術公演のための楽団や、大規模応援団が韓国入りし耳目を集めている。北朝鮮国内ではどのように報じられ、また一般国民は、どう受け取っているのだろうか?

開幕式に合わせて、金正恩氏の実妹で、労働党中央委員会第1副部長の金与正(キム・ヨジョン)氏が韓国入りした2月9日などに、北朝鮮内部に住む複数の取材協力者に聞いた。

「南朝鮮の平昌で冬季五輪をやるということは時々話されているけれど、具体的には何にも知りません」

北部地域に住む20代の女性はこのように言う。以下は彼女との一問一答だ。

――韓国に入った北の芸術団が8日に音楽公演したのは北でもテレビ放送したのではないか?

「今、電気が全然来ていないんですよ。だからテレビも見られなくて、皆よく知りません」

※凍結によって水力発電が止まるため冬季は電力難がより深刻になる。

――五輪後に障害者の競技大会のパラリンオリンピックも開催されるが。

「そんなことは初めて聞きました。障害者の体育競技なんて、こちらでは誰も知りませんよ」

障害者スポーツについて北朝鮮社会の認識はきわめて低い。両江道に住む別の取材協力者はパラリンピックについて、

「障害者がどうやって競技をするのですか? 周囲に聞いても障害者スポーツなんて、知っている人はいないと思いますよ」
と述べた。
次のページに続く…

<北朝鮮内部>開城工団の無断生産品が大量流通 高品質で富裕層に人気(写真2枚)

開城工団製品が大量に売られていた両江道の恵山市場の女性商人。2013年8月に撮影アジアプレス
◆勝手に生産して国内販売

金正恩政権が核実験を強行したため、韓国企業が2016年2月に撤収した開城(ケソン)工業団地で、北朝鮮当局が工場を無断稼働させて衣料品を大量生産し、国内で販売していることが分かった。生産された製品は、個人商人たちによって全国の市場で流通しており、主に富裕層から人気を博しているという。北朝鮮内部の取材協力者が調査した。(カン・ジウォン/石丸次郎)

アジアプレスの複数の北朝鮮内部の取材協力者は、昨年11月以降、衣料品の流通業者などに会って、開城工団で生産された衣料品の国内流通の状況について調べた。

北部地域に住む取材協力者A氏は
「開城工団で生産された製品が全国の市場で販売されている。韓国人が撤収した後、中国向けに注文を受け生産していたが、(経済制裁で)、中国に輸出できなくなり、国内向けに販売されるようになった。昨年秋までは、手袋と帽子以外、靴下から下着まで多様な衣料品を生産していたが、市場では中国製品よりも高値で販売されている」と述べた。
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北朝鮮当局は、昨年10月6日に、祖国平和統一委員会の対南宣伝メディア「わが民族同士」の論評を通じて、「工業地区で我われが何をしようと、どこの誰も口出しできない。(中略)工業地区の工場はさらに力強く動くだろう」と、開城工業団地を一方的に稼働させていることを事実上認めていた。

取材協力者A氏によれば、生産された製品には一切商標やロゴがないものの、「工団製品」と銘打って販売されているという。またこれら「工団製品」は、機関や企業を通じて市場に流通しているのではなく、「トンチュ」と呼ばれる新興成金などが買い入れて地方に流通させているとのことだ。まず黄海北道の沙里院(サリウォン)に出荷された後、コンテナ車で恵山、清津、金策、咸興などの大都市に運ばれているという。
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<北朝鮮内部>ガソリン急騰し最高値記録 軍も木炭車と牛車で物資運搬 制裁影響じわり(写真3枚)

(参考写真)市場で買い物をする痩せた軍人は将校だった。2013年8月両江道恵山市にて撮影(アジアプレス)

◆ガソリンは日本の1.8倍

北朝鮮国内の燃料価格が年明けから急騰していることが、アジアプレスの調査で分かった。(カン・ジウォン)

燃料価格の調査は、1月4日~6日に北部の咸鏡北道(ハムギョンプクド)の都市部と、両江道(リャンガンド)の計3地点で、北朝鮮住民の取材協力者が行った。

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ガソリンは2万6,000ウォン(約346円)、 軽油は1万1,700ウォン(約155円)だった(価格は1キロ当たりの北朝鮮ウォン)。これは、北朝鮮に対する経済制裁が強化された2016年以降の最高値である。特にガソリンは、リットル換算で日本の約1.8倍になる。調査に当たった協力者は「燃料価格はどんどん上がるという噂が流れている」と述べた。

昨年12月24日に国連安保理で採択された制裁決議「2397号」によって、北朝鮮への石油精製品の輸出は2016年に比べ9割削減され50万バレルが上限に設定された。燃料価格急騰の原因は、経済制裁を見越した金正恩政権が供給統制をしているためと考えられるが、燃料商人が売り惜しみを始めた可能性もある。

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<北朝鮮内部>厳しい制裁にどう対応? 密輸と輸出品転換を模索 「日本で買ってくれよ」と泣きごと言う貿易幹部も(写真3枚)

中国との国境警備に動員された民間人。「労農赤衛隊」と思われる。銃を担いでいた。2017年9月末に平安北道を中国側からパク・ヨンミン撮影(アジアプレス)


12月22日に国連安全保障理事会で採択された北朝鮮に対する新たな制裁決議「2397号」。石油精製品の輸出を2016年比で年間50万バレルに制限する他、農産物や機械、鉱物類、木材なども禁輸対象となった。

既に石炭、繊維製品、鉄鉱石、海産物など主力輸出品は禁輸措置が取られており、金正恩政権にとって大幅な外貨収入減は避けられないだろう。

制裁に対する北朝鮮国内の動向はどうだろうか? 安保理決議が採択される直前の先週末、北部地域に住む取材協力者が伝えてきたところによると、中国への輸出が禁じられていない品目への転換が始まっているという。

「中国に輸出できるものに貿易会社も庶民も集中している。目立つのは漢方薬材料とカツラ加工だ。カツラは中国から材料を仕入れて賃加工する。給料は一カ月に100中国元(約1700円)程だが人が集まって来る。市場での商売が沈滞しているから」
取材協力者はこう伝える。
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漢方薬材料は中国から根強い需要がある。薬草や松の実などで、以前から北部地域では有力外貨稼ぎ品目だった。しかし、今回の制裁「2397号」では農産物も禁輸品に定められており、漢方薬材料がそこに含められる可能性もある。

カツラは、咸鏡北道にある12号教化所(刑務所)――通称全巨里(チョンゴリ)教化所で、女性収容者に作らせてきたが、それを一般にも拡大する動きが貿易機関で始まっているようだ。
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<北朝鮮内部>制裁で輸出絶たれたはずのイカ漁に木造船殺到なぜ?(写真3枚)

北朝鮮のイカ漁船が海上保安庁の巡視船に放水されている。2017年7月撮影 海上保安庁

 

北朝鮮からのものと思われる木造漁船の日本海沿岸への漂着が続いている。バラバラになってしまった船も多いが、原型を留めている船には、中央にやぐらのような、物干し台のような構造物が見える。

6-7月のイカ漁最盛期。北朝鮮の漁船が大挙して日本の排他的経済水域(EEZ)の好漁場の大和碓(たい)付近に入り込んで違法操業していた。

海上保安庁が7月に撮影した写真を見ると、同様の構造物を設置した木造船がたくさんある。獲ったイカを干している船の映像もあった。

日本海に漂着した船からはイカ釣り用の針も見つかっている。11月に入って急増した漂着船は、9-10月の秋シーズンに、貧弱な装備の木造船で無理をして日本近海までやって来たイカ漁船だと考えるべきだろう。
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良質のイカは主に中国に輸出される。海産物は北朝鮮の2016年の輸出額3位、200億円程度に上るとみられる。イカもその一翼を担う貴重な外貨稼ぎ源なのだ。

しかし解せないのは、北朝鮮は8月の国連安保理決議で海産物の輸出を全面禁じられており、イカでの外貨獲得は不可能なはずだ。油代など原価のかかるイカ漁は元が取れるのだろうか?
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