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<アスベスト問題>堺市煙突は「取り残しの手本」調査の専門家が指摘

取り残しの指摘を受けて実施した2017年4月12日の再作業の完了報告の一部。ここで示された写真でもアスベストの取り残しとみられるものが写っているという(堺市提供資料より)

大阪府堺市が書類送検された煙突のアスベスト違法工事後の2017年3~4月に実施された現場の後片付けの工事で起きた「取り残し」疑惑。市の指示で隠ぺいされたアスベストの取り残しは存在するのか。(アジアプレス/井部正之)

◆専門除去業者が取り残し断言

「あー、これは残ってますね」

堺市が隠ぺいを指示した報告書に載っていた写真を見て即答したのは煙突のアスベスト除去を専門に行う除去業者だ。

その除去業者に見てもらったのは書面をそのままの見た目でデータ化したPDF文書である。まずその業者が指摘するのは改ざん前の報告書の19ページ上段の写真だ。写真を拡大して見ながら、こう説明する。

「躯体のコンクリートが光の加減で白くなることはあるけど、こういう帯状に残っているのは経験上(アスベストが)残っていると思う。煙突から(除去装置を)引き上げる速度を失敗するとこういうふうに螺旋状に残るんですよ」

煙突専門の除去業者がアスベストの取り残しがあると指摘した写真。もともと現場を見た分析機関が「螺旋状に除去残しが確認できる」と報告したもの(事業者提供資料より)

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アスベスト除去取り残し問題 「大阪府は公開、堺市は隠ぺい」と対応別れる

大阪府堺市が書類送検された煙突のアスベスト違法工事後の2017年3~4月に実施された現場の後片付けの工事で「取り残し」が存在していたとの疑惑は堺市議会に飛び火。今回は、報告書の改ざんと隠ぺいを市が認めた堺市議会でその後の議論を報告する。(アジアプレス/井部正之)

◆大阪府は不都合情報も公開

堺市議会で煙突のアスベスト取り残し問題を追及する長谷川俊英市議(堺市議会インターネット中継より)

2017年3~4月の北部地域整備事務所における煙突内のアスベスト除去工事で、取り残しを指摘した報告書の書面を市建築課が改ざんを指示し、隠ぺいを図ったことを3月5日の市議会本会議で窪園伸一建築都市局長は認めた。

この問題を取り上げた長谷川俊英市議は市の行為は私文書偽造罪に該当する可能性があると指摘。そうした追及に窪園局長は不適切な対応だったと認め、煙突内にアスベストの取り残しについて再調査をすることを約束した。

ここまでは「堺市アスベスト『取り残し』問題 『記録の改ざんは市の指示』建築局長認める」(3月8日アジアプレスネットワーク)記事にて紹介した。

今回は報告書の改ざんと隠ぺいを堺市幹部がどう受け止め、今後対応するのかについての市議会における議論である。

長谷川市議は煙突の再調査は「当然」としたうえで、5月中旬に元請け業者との打ち合わせで取り残しの指摘を確認したにもかかわらず、その書類を隠したことの重大性に言及する。

大阪府に対して提出された報告書。クロシドライト(青石綿)の散乱などが指摘されているがそのまま情報公開された(古川和子さん提供)

さらに環境省や国土交通省のマニュアルなどでアスベストの取り残しがないよう除去することが記載されていることなどから、市の対応の不十分さも指摘した。

窪園局長は「市が(報告書を)確認したときに重要性を気づき、分析機関に内容や状況を確認。そのうえで調査等の対応をすべきだった」と市側の対応の誤りを認めた。

古川さんは堺市だけでなく、大阪府に対しても同様の報告書の情報公開をしている。大阪府が公開した報告書では、同じ分析機関がクロシドライト(青石綿)が壁面にへばりついていたり、廊下に散乱しているとの指摘や証拠写真も含まれていた。

大阪府立・金岡高校の報告書には、校舎内の渡り廊下にクロシドライト(青石綿)が散乱しているようすが指摘されていたが、そのまま開示された(古川和子さん提供)

長谷川市議は「こんなことは言いたくないが」と前置きし、「松井(一郎)知事のもとでは自分たちに都合が悪い文書がすべて公開された。竹山(修身)市長のもとでは市にとって都合の悪い文書が削除された」と指摘した。

2016年6月における違法工事発覚後、同9月の市議会で長谷川市議は市の対応に対する疑問点の1つとして、情報提供のあり方を挙げた。

当時、島田憲明建築都市局長は9月1日の定例会で「(アスベスト飛散事故の事実について)少しでも早く情報をお伝えすべきことであったと反省している」と回答。竹山市長も「今後このような事態を二度と引き起こさないように、しっかりと庁内で連携を図ってまいりたいと考えております」と答弁している。

こうした経緯をふまえ、長谷川市議は「同じような情報提供をめぐる問題が2度も起こった。市長は日頃から市民目線という。大賛成だ。これが市民目線の処理か。私からすると役人目線。自分たちの保身のために記録隠しをした」と迫った。

竹山市長は前日に公務の帰りに現場を見たことに触れ、「安全が確保できていると報告を受けている。昨日も当該煙突の封鎖を確認した。(古川さんら)『家族の会』への対応は公務員の基本、丁寧、慎重さを欠いた対応。遺憾に思っている」と述べるにとどまった。


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堺市アスベスト「取り残し」問題 「記録の改ざんは市の指示」 建築局長認める

2016年9月堺市議会で北部地域整備事務所のアスベスト違法工事について追及する長谷川俊英市議(堺市議会インターネット中継より)



大阪府堺市が書類送検された煙突のアスベスト違法工事後の2017年3~4月に実施された現場の後片付けの工事で「取り残し」が存在していたとの疑惑が発覚。今回は堺市議会における追及を報告する。(井部正之)

◆建築局長が市指示の隠ぺい認める

堺市によるアスベスト「取り残し」隠ぺいは私文書偽造罪に当たる可能性がある──。

3月5日に開催された大阪府堺市議会本会議で市による違法行為の疑いが持ち上がった。

指摘をしたのは長谷川俊英市議である。長谷川市議はまず取り残し記録隠ぺいの経緯を尋ねた。

答弁に立った窪園伸一建築都市局長は「5月中旬に測定会社から元請け業者を通じて提出された3冊の測定結果報告書の一部です。それは測定の目的と異なるものが添付されているという理由から合計34ページを濃度測定の現場状況写真とあわせて取り外した」と手元の答弁資料を読み上げた。

この間報じてきたように、情報公開請求をしたのは被害者団体、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会前会長で堺市在住の古川和子さんだ。開示された文書の途中からページ番号が抜けていたり、現場の測定状況を撮った写真がないことを不審に思い、市に問い合わせたところ、市建築課が元請け業者との打ち合わせ段階ではそうした写真が存在していたことを認めた。

元請け業者が修正前の報告書を所有していたため、市が“仲介”するかたちで報告書の欠落部分を入手した古川さんは削除されていた記録にアスベストの「取り残し」や周辺への散乱が指摘されていたことを知り、「記録が隠ぺいされた」と追及を始めた。これが今回の問題のきっかけである。

こうした経緯を説明した後、長谷川市議は「隠したと指摘される行為はいったい誰の指示でおこなわれたのか」と聞いた。

窪園局長は「私ども担当職員が軽々に判断して報告書から外すように元請け業者に指示した」と市建築部の指示による隠ぺいを認めた。

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堺市が「アスベスト取り残し」を改めて否定し現場確認を拒否

書類送検されるきっかけとなった煙突のアスベスト除去をめぐり、取り残しが存在するとの指摘された大阪府堺市。連載4回目の今回は2月26日の再交渉で市はどのような回答をしたのかを明らかにする。(井部正之)

◆市は除去残しを否定

2月26日の被害者団体、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会堺対策チームと堺市の再交渉のようす(井部正之撮影)

「一体、何をいってくるんだろ」

2月26日の堺市との再交渉直前、そう笑っていた被害者団体、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会前会長の古川和子さん(堺市在住)。だが、その表情は話し合いが始まると曇り、終わった後には厳しいものになっていた。

「説明が変わった。2月15日(の交渉)では取り残しを認めたのに、今回は認めてないと翻した」

交渉後、古川さんは納得がいかないという表情で話した。

2016年6月堺市の北部地域整備事務所でおこなわれた改修工事で、煙突にアスベストの1つで発がん性の高いアモサイト(茶石綿)が70~80%という高濃度で含まれる断熱材が使用されていたのに、適正な対策なしに解体した。その結果、アスベストが周辺に飛散し、住民らが吸い込んだ可能性が高い。

この違法工事によって、市と職員4人は大阪府警に書類送検されることになった(2017年3月不起訴処分)。

違法工事後の“後片付け”工事が終わった現場のようす(井部正之撮影)

前回まで3回の記事で、古川さんの情報公開をきっかけに、2017年3~4月前年の違法工事現場を片付ける除去工事でもじつは煙突内のアスベストを残したまま終了していたとの疑惑が発覚し、市建築課の担当者が取り残しの存在を認めたと報じた。

だが、2月26日大きく状況が変わった。市は改めて「取り残しはない」と主張した。

まず市建築監理課は2017年4月11日に指摘された煙突内のアスベストの取り残しについての対応状況をこう説明した。

「(4月12日)元請け業者、アスベスト専門業者、堺市で分析機関から指摘があったところを確認したんですけど、除去残しというよりも、全体がアスベストの飛散防止剤で塗布された状態。一部ここに残っているという感じのアドバイスをいただいて、我々は目視(で取り残しを)確認できなかったんですけど、アスベスト除去業者さんがみても、完全に残っていることが正直確認ができなかった。しかし、(それまで様々な助言をもらった)経験上ね、残っているとの見識が測定業者にあるので、1回掃除しようということで、煙突の上から下まで清掃した」

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アスベスト除去工事で「取り残し」の重大ミス 職員が書類送検された堺市は なぜ「教訓」に学ばない?

市有施設の違法工事をめぐり市と職員4人が書類送検された大阪府堺市で、違法工事現場を片付けるアスベスト除去工事さえ不適正だったことを市建築課が認めた。連載3回目の今回は現状を改めて考察する。(アジアプレス/井部正之)

◆「1か月後に清掃」目立つ対応の遅れ

2017年3月25日に堺市で開催された健康リスクの検証のための懇談会のようす。ちょうど煙突内のアスベスト除去直後だったが、取り残しの説明はなかった(井部正之撮影)

2月15日、被害者団体、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会前会長の古川和子さん(堺市在住)ら堺対策チームが2017年3~4月の北部整備事務所における煙突のアスベスト除去工事について大阪府堺市を追及し、おもに以下の3点が判明した。

(1)2017年4月11日の作業後に分析機関が目視確認をしたところ、アスベストの取り残しが煙突上部から下部まで螺旋状に残っていることを分析機関が指摘。翌12日に手作業で再除去。だが、同15日の分析機関による目視確認で再び煙突上部は手つかずのまま残されていたうえ、再除去した中~下部においても取り残しが存在することが市が「保有しない」報告書で指摘。

(2)上記の取り残しについて、工事を発注した市建築課の担当者は「4月12日に一度(再除去に)入っております。で、この写真のあとには入っておりません」「それ以降は触っていない」と証言。ただし、建築監理課は「残っているという認識がない」。

2016年6月にアスベストを飛散させる違法解体があった大阪府堺市の北部地方整備事務所。となりの保育園に煙突を解体したコンクリートの破片が落ちてきたという(井部正之撮影)


(3)古川さんが実施した情報公開請求で開示された3つの報告書では除去作業後にも煙突内にアスベストの取り残しがあることを示す現場写真など計34ページが欠損。市と施工業者の打ち合わせ段階では存在しており、市が「必要ないものは外すよう指示した」。だが、具体的にどれを削除しろとの指示はしていないとも主張。

また前回の記事では触れなかったが、市に「存在しない」報告書には、2017年3月11日の除去作業前に実施した空気中のアスベスト測定の際、建物周辺に〈アモサイト(茶石綿)と思われる繊維が確認できた〉とし、さらに市建築課の担当者に報告したことも記載されている。

2017年3月19日、建物南側通路で見つかったアスベストの1つ、アモサイト(茶石綿)の繊維束。複同3月11日同様、複数箇所で確認されている(事業者提供資料より)


3月19日にも建物南側通路の複数箇所でアモサイトを確認している。かなり細かな繊維状であることが写真でわかる。違法工事後に適切な除染作業が行われなかった結果、9か月が経過しても細かなアスベストが散乱している実態がうかがえる。

2月15日の交渉時にこの点を指摘された市側はその事実を認めたが、「いわれて現地に本人が確認しにいったけどわからなかった」という。報告書の書きぶりからはその場で市職員に伝えたことがうかがえるが、市側は後に改めて現場を確認したとの説明だった。

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煙突アスベストの除去残し、堺市建築課が認める

市と職員4人が書類送検された市有施設の違法工事をめぐり大阪府堺市が揺れている。市が再発防止に取り組むなか、2017年3~4月に実施した、その現場を片付けるためのアスベスト除去工事が不適正だったとの疑惑が浮上。堺市の新たな疑惑を追う連載2回目。(アジアプレス/井部正之)

2月15日の堺市と中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会堺対策チームらとの交渉のようす。ほとんど市職員に取り囲まれた状態(井部正之撮影)

◆削除された取り残し記録

2月15日の堺市と中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会堺対策チームらとの交渉のようす。ほとんど市職員に取り囲まれた状態(井部正之撮影)

2月15日、被害者団体、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会の前会長で堺市在住の古川和子さんら「家族の会」堺対策チームはアスベスト対策条例の制定などを求め、大阪府堺市と交渉を持った。

その席で古川さんらは堺市が煙突のアスベスト除去工事で取り残しがあるにもかかわらず、工事を完了したことを隠ぺいしたのではないかとの疑惑について追及した。

筆者は交渉に同席して、その一部始終をみてきた。そこでどのようなことが明らかになったのかお伝えする。

古川さんが実施した情報公開請求で開示された3つの報告書では作業後にも煙突内にアスベストの取り残しがあることを示す現場写真など計34ページが欠けていた。

削除された報告書のページの1つ。除去作業後も煙突内にアスベストが残されたままだったことを指摘している(事業者提供資料より)

市の仲介で施工業者からの提供という形で欠損した部分を入手したところ、煙突のアスベスト除去工事で一部を取り切れないまま、工事が完了していることが証拠写真とともに記載されていた。

市が保有する報告書では存在しないというアスベストの取り残し記録だが、じつは施工業者との打ち合わせ段階では存在していたことを市は認めている。それがなぜ市に提出された報告書では削除されたのか。

堺市建築課は「一度仮に提出していただいて、中身を確認させていただいて報告書として必要ないものは外すよう指示した」と説明した。ただ「どれを外せと指示はしない」(同課)とも釈明した。
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堺市が煙突のアスベスト除去で取り残しを隠ぺいか

古川和子さんが情報公開で堺市から入手したアスベスト除去工事の報告書。市が保有するものではアスベストの取り残しを指摘するページなどが「存在しない」(撮影:井部正之)

2017年1月に大阪府堺市と職員4人が大気汚染防止法(事前調査義務)違反の疑いで書類送検される原因となった市有施設におけるアスベスト含有煙突の違法解体問題。市が再発防止に取り組むなか、新たな不正が疑われる事態が発覚した。堺市の新たな疑惑を連載で追う。(アジアプレス/井部正之)

◆除去工事が不適正だった疑惑が浮上

「隠ぺいですよ。隠したとしか考えられない」

被害者団体「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」の前会長、古川和子さん(堺市在住)が言う。

2月15日、アスベスト対策条例の制定などを求める古川さんら「家族の会」堺対策チームが堺市と交渉した。その際、違法解体により現場に残されたままとなっていたアスベスト含有の煙突(高さ5.3メートル)について、2017年3~4月に改めて実施した除去工事が不適正だった疑惑が浮上したのだ。

きっかけは古川さんによる情報公開請求である。

違法工事前の北部地域整備事務所の屋上。断熱材にアスベストを使用した煙突が立っている(堺市提供)

アスベストの不適正工事問題に取り組むようになっていた古川さんは2017年12月19日、堺市が実施した3つのアスベスト除去工事の報告書を情報公開請求した。市から開示の連絡を受け、同27日に3つの報告書についてA4用紙で計67ページ(表紙含む)の複写を入手した。古川さんはこう明かす。

「正月明けに受け取った文書を見てみたら(1つの文書では)報告書の13ページ以降はページ番号がなくなっている。あと分析の顕微鏡写真があるだけ。堺市のホームページ(飛散事故の健康リスクを調べている懇話会の資料など)では現場写真もある。なんでこれだけ現場写真がないのか、またその後のページでは通し番号が打ってないのか不思議に感じた」

市に問い合わせたところ、担当課の建築課から「打ち合わせ段階では(現場写真も)あったが、報告書には入ってない。役所にないから開示できない」との回答だった。
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